おくりびと シネマの世界<第19話>
滝田監督作品は、2004年の「壬生義士伝」も印象に残っています。
「壬生義士伝」は、本(2000年浅田次朗著上・下2巻)、テレビ(2002年1月2日テレビ東京10時間ドラマ)も、それぞれ道具は違いましたが、心に沁みる味わい深い感動がありました。
この2本の映画は、秋の夜長にゆっくり自宅(DVD)で見る映画としてお薦めいたします。
「おくりびと」は、俳優木本雅弘が原作を読んで感動し、原作者の元に何度も足を運び話し合い、やっと映画化の許可が下りたとのことです。
映画の舞台は、山形県酒田市‥葬儀の前に遺体を清め、顔に死化粧をしてお棺に納める納棺師の悲喜交々が、主たるストーリーです。
映画「おくりびと」は、日本国内の映画賞を総なめし、2008年モントリオール世界映画祭でグランプリ受賞、2009年アメリカアカデミー賞では、外国語部門賞を受賞しています。
この映画の見どころは、なんといっても名優「山崎努」の存在感と、そのリアルな演技で、本木雅弘が演じる新米納棺師を育てるベテラン納棺師(小さな納棺会社の社長)が、彼の役どころです。
映画の中で山崎努演じるベテラン納棺師の体・手足の動きが、セリフでは表現できない納棺の儀のもつ空気感を醸し出していました。
彼の顔の表情に、とくに目と口元の動きに演技しているとは思えない独特の雰囲気があり、黙って居るだけでも存在感がありました。
私の印象に残ったのが、納棺の仕事のあと食事をするシーン‥二人が、フグの白子を焼いてハフハフ美味しそうに食べるシーンや、大ぶりなフライドチキンを貪(むさぼ)るようにガツガツ食べるシーンなどは、人間の動物としての性(さが)というべき本能に触れ、併せて生死感溢れるリアルな演技で真に迫り、見入ってしまいました。
私が、「山崎努」に感じる迫力やリアルな存在感を他の俳優で感じるのは「緒形拳(故人)」・「仲代達矢」‥中堅では「柄本明」‥若い世代の俳優では「香川照之」です。