人生、ここにあり! シネマの世界<第16話>
映画クレジットの監督名に、ジュリオ・マンフレドニアとありましたが、この作品で初めてこの監督を知りました。
イタリア語の原題は、「SI PUO FARE(やればできる)」で、その原題を直訳して「やればできる」の日本語タイトルほうが、「人生、ここにあり!」などという大袈裟で無粋なタイトルより映画の表現したいニュアンスに近いと思いました。
映画は、1980年代のミラノが舞台です。
イタリアでは、1978年施行の法律(通称バザリア法)により精神病院の撤廃が決定しました。
映画は、イタリアが精神病院全廃を目指していた頃の実話をもとに、コメディ仕立てに脚色されて制作されています。
左遷された主人公の新しい職場は、精神に障害をもつ元患者たちが無理やり加入させられたカタチだけの協同組合でした。
精神病について知識のない主人公ですが、それぞれ異なった精神障害をもつ元患者たちに協同組合の意義と組合員の権利を熱く語り、新たな事業の立ち上げを指導しました。
彼は、天衣無縫でバラバラな元患者たちのワガママをまとめ「やればできるさ」と元患者たちを激励し、彼らの天性の才能を伸ばすために孤軍奮闘しました。
精神病施設収容患者たちを主人公にした秀作映画に、1975年制作のアメリカ映画「カッコーの巣の上で」があります。
同じように精神病院元患者たちが主人公の映画「人生、ここにあり!」に、1970年代のアメリカン・ニューシネマにあったような社会的な重苦しさはなく、「やればできるさ」と大らかに社会と関わることで生きる価値を見つけようとするイタリア映画に、さわやかなニューウェーブを感じました。