人生万歳! シネマの世界<第15話>
映画はニューヨークを舞台に、偏屈な老人ボリス‥自称IQ210で元ノーベル賞候補であったことだけが自慢の落ちぶれ天才物理学者と能天気な南部出身の家出娘メロディ‥の、年齢も知能指数も離れた男女二人のチグハグな同棲生活を描きます。
ボリスは社会の常識を拒絶し、世の中の出来事に辟易しながら、ニューヨークのど真ん中で独り孤独に暮らしています。
カフェテラスでの友だちとの会話やアルバイトでチェスを教える子供たちにも容赦なく「毒舌」を浴びせます。
一方21歳の家出娘メロディは、美人でキュートですが、世間知らずで天真爛漫‥ニューヨークに出て来たものの、飢えと寒さで偶然知り合ったボリスのアパートに無理やり押しかけそのまま居座ります。
ボリスの過激な毒舌もメロディには通じず、トンチンカンな二人の会話が続きます。
追い出そうとするボリス、出ていこうとしないメロディ、そして二人の同棲生活が始まりました。
メロディは、ボリスの人間嫌い・オンナ嫌い・宗教嫌いの主張(偏屈な毒舌)を聞くうちに、彼女は彼こそ自分の運命の人とすっかり思い込んでしまいました。
いつの間にか偏屈老人の心にも変化が現れ‥ついに二人は結婚しました。
しかし‥ここから騒動が始まります。
とにかくセリフ(ほとんどボリスの毒舌)が愉快で面白い映画ですので、この続きは映画館(かDVD)でご覧ください。
この映画はニューヨークに暮らす人たちの自由な精神とスノビズムな生活が、ウッディ・アレンの才気溢れる脚本により、ギャグ・パロディ・ウィット(エスプリ)・ユーモアによってクールに表現されています。
そしてウッディ・アレンのシニカルな社会批判精神が、ボリスの毒舌によって映画を通して見ている私たちにも向けられます。
その表現方法が大変おもしろく、映画を見ている私も小バカにされているのですが、笑いを堪えきらず、つい吹き出してしまいました。
映画のシーンに、ニューヨーク・ユニクロの店内シーンが登場します。
カタカナで「ユニクロ」と店名があり、ウッディ・アレン流シャレっけの「ジャパンクール」のメッセージと思ったのは、日本人である私の身びいきでしょうか?
彼は、ジャズの大ファンでジャズ・クラリネット奏者としても有名です。
世界中の映画人が、憧れるアカデミー賞の授賞式をすっぽかして、ジャズのライブでクラリネットを吹いていたこともあるそうです。
映画「人生万歳!」は、偏屈な自由人ウッディ・アレン監督の観客への人生賛歌メッセージと思いました。