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心の時空

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白いリボン  シネマの世界<第14話>

映画「白いリボン」の監督ミヒャエル・ハネケ(1942~69才)は、ウィーン大学(1365年創立)で哲学・心理学を学んだというだけあって、映画を道具にして、見る者の深層心理に入り込むのが上手いと思います。
映画を見る人間の奥に潜む悪魔的な人間の不条理さ・理不尽さを、これでもかと曝(さら)け出させて神経を逆なでし、不快な気持ちにさせる類い稀な映像作家と思います。
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ウィーン大学の風土なのか、哲学・心理学分野で人間の深層心理に迫る精神分析学者フロイトや現代日本哲学の異才中島義道(1946~65才‥「幸福な人生など絶対に存在しない」が自説)などを輩出しています。
「白いリボン」は、美しいモノクロ映像としっかり構成された脚本で奇才ミヒャエル・ハネケ監督の“映画史に残る傑作”と思いました。
ハネケ監督は「カンヌ国際映画祭」で幾多の受賞歴をもち、この「白いリボン」で2009年のカンヌ国際映画祭パルムドール大賞を受賞しています。
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この映画「白いリボン」を最後まで見終わるには、見る側にもそれなりの忍耐と覚悟が必要です。
映画にストーリーらしきものはなく、第一次世界大戦(1914~1918)前夜の北ドイツの小さなキリスト教戒律の厳格な村が舞台で、村人たちの間で次々に発生する不可解な事件・陰険な出来事・邪悪な行為を映画は淡々と語ります。
モノクロ映像による表現が、一見厳格な戒律で禁欲的な暮らしをしている(ように見える)村人たち‥子供たちさえも、実は「見えないところで何を考え何をしているか分からない」という村の陰鬱な空気感を見事に表現していました。
キリスト教会の牧師であり権威を善とする父親が、自分の子供たちに行なう理不尽な体罰としつけに、絶対服従させられる子供たちのキリスト教原理主義的「純潔と無垢」の象徴が「白いリボン」でした。
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白いリボンで髪を束ねた姉クララ(マリア=ヴィクトリア・ドラグス)の陰険な表情と、白いリボンを左腕に付けた弟マルティン(レオナルド・プロクサウフ)の悲痛な演技が秀悦です。
クララの全体から発する大人(父親に象徴される理不尽なもの)に対する憎悪・怒り・反抗・悪意やマルティンの眼差しに宿る不信・悲嘆・虚無など、二人のすばらしい表現力に感心しました。
ハネケ監督は、映画の最後まで、村に潜在している大人たち、子供たちの恐怖・不満・反抗・憎悪・暴力・欺瞞などを、これでもかと暴(あば)き出し‥私は映画が終わり、エンドロールに入っても不愉快感で立ち上がれませんでした。
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この映画‥私はどうも「病みつき」になりそうな気がします。
by blues_rock | 2011-09-15 21:27 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)