マイ・ブラザー(Brothers) シネマの世界<第11話>
スサンネ・ビア監督については8月27日の「シネマの世界‥未来を生きる君たちへ(原題:復讐 こちら)」で書きましたので参考にしていただけると幸いです。
ジム・シェリダン監督は、「マイ・レフトフット」(1989)や「父の祈りを」(1993)など感動的な映画を発表している名監督です。
スサンネ・ビア監督の「ある愛の風景」のシナリオを変えずジム・シェリダン監督は‘コピー’ではない彼自身のオリジナル映画「Brothers(マイ・ブラザー)」にしていました。
シェリダン監督の映画「マイ・ブラザー」は、シリアスなストーリーを冷んやりした空気感のある映像にして今の疲弊したアメリカ社会をリアルに映し出した見ごたえある秀作に撮り上げ、2009年のアカデミー作品賞は、「ハートロッカー」(この作品も秀作)より、テーマに普遍性のある「マイ・ブラザー」のほうだろうにと、私は思いました。
兄弟を演じる兄役のトビー・マグワイアと弟役ジェイク・ギレンホールの“目”が似ており、本当の兄弟のようで驚きました。
映画の中で二人の“目”による感情表現がすばらしく、映画の重要な見どころとなっています。
夫(兄)が戦死したと知らされた妻役ナタリー・ポートマンが、暖炉の前で‥絶望と寂しさとで義弟を見つめキスをするシーンがあります。
演技とはいえ彼女の色香(フェロモン)には思わず息を呑み、映画「レオン」(1994)に出演していた時の少女(下の写真)から名女優に成長していました。
登場する出演者たち皆な自然でリアルな存在感がありました。
アフガニスタン戦争で捕虜になった兵士が解放され家庭に戻ったとき、捕虜のときの悲痛な記憶は、次第に彼の神経を狂わせ、自分が愛した家族を巻き込んでいきました。
1970年代にはベトナム戦争で疲弊したアメリカ人の心の痛みを表現した名作映画が数多く生まれました。
「クレイジーハート」(こちら)に出演しているマギー・ギレンホールは、ジェイク・ギレンホールのお姉さんです。
好きな監督の次の作品、贔屓(ひいき)の俳優が出演する新しい映画の封切りを待つのも映画好きの楽しみの一つです。