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心の時空

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a day in my life

ゴッホを愛したアルツハイマー認知症の女性

今年も夏の強い日差しが、出穂(しゅつすい)した田んぼを照らし、トンボの群れが飛び交い森からはカナカナの鳴き声が聴こえています。
昨年の春、私の働くデイサービス施設の「絵の時間」に軽度の認知症ながら、いつも感動する絵を描かれる女性の高齢者の方がおられました。
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一人暮らしの自宅で転倒し、腰を打ち亀裂骨折で入院され治療とリハビリのために、半年余り施設の利用を休まれました。
その間の日常生活の変化で、アルツハイマー認知症の症状が、かなり進行してしまいました。
本来なら日常生活すべてに介助が必要になると特別養護老人ホームに入所することになります。
しかし、家族の強い希望で、いままでとおり自宅介護を続けたいと昼間はデイサービス施設に復帰され、ほとんど毎日通所されていました。
認知症になると雪原にたった一人でいるような孤独と恐怖を覚えるのだとか、自分が何者なのか?ここはどこなのか?どこで何をしてきたのか?回りにいる人たちは、どこのダレなのか?「思い出せない記憶」への不安で苛立ち、情緒不安定になるのだそうです。
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この方は認知症を発症されるまで著名な書道家でした。
彼女のケアマネージャーに同行して、この方の自宅を訪ねたことがあります。
彼女の友人である建築家の方が、ぜひ設計させてほしいと希望されてできた家なので機能的で快適な住居でした。
壁に彼女の見事な「書」が掛かり、部屋は趣味のよい調度品や骨董の陶器類が整然と置かれていました。
退院された昨年の夏に施設に復帰され、久しぶりにお会いしました。
介護員が両手を引いてあげると自立歩行されますが、表情も硬くうつろな目で辺りを眺めておられました。
私が「○○さん、おはようございます。お久しぶりです。お元気そうですね。」と挨拶すると、じっと私の顔を見られ「‥ごめんね、顔は憶えているのだけれど、お名前が‥ごめんね。」と俯かれました。a0212807_1515223.jpg
その日の「絵の時間」に、この方が好きなゴッホの絵を大型TV画面に映し、ゴッホの絵の話をしました。
ゴッホの絵を食い入るようにじっと見入っておられました。
私に伝えたいことがあるのか「ワタシ‥アタマが‥もやもやして、言いたいことが憶い出せないの。」とお詫びされるので背中をゆっくり撫でながら「憶い出したら聞かせてください。」と応えました。
この方が何かに感動したときに見せられる笑顔や表情は、初めてお会いした頃のままでアルツハイマー認知症にあっても、この方の人柄や品性を感じました。
昨年秋ついに入院され、今年の初めに亡くなられました。
認知症という病気の症状は千差万別ながら、晩年にアルツハイマー認知症を患われたこの女性から、ご自分の人生で培われた品性と高齢者の尊厳とは何かをしっかり教えていただきました。
by blues_rock | 2011-08-31 01:51 | 高齢者介護(認知症) | Comments(0)