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心の時空

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一枚のハガキ   シネマの世界<第8話>

この夏上映の映画「一枚のハガキ」は、新藤兼人監督(1912~、99才)の渾身の作品と思います。
出演した名優陣の中でも、二人の夫(兄弟)に戦死された寡婦を大竹しのぶが名演しています。
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私が、最後に新藤兼人監督作品を見たのは1992年の「濹東綺譚(ぼくとうきたん)」だったように記憶‥この映画で永井荷風を演じた津川雅彦を相手に、私娼屈の芸者を演じた墨田ユキの姿態が美しく、今でもきれいな体の印象が残っています。
a0212807_17431736.jpgさて、新藤監督の新作映画「一枚のハガキ」のストーリーは、運の悪い不幸な寡婦(大竹しのぶ)の人生を中心に、最初の夫(兄)から彼女に宛てた「一枚のハガキ」通して、戦争の不条理と国家の理不尽さに巻き込まれた不運で不幸な人々を描いていきます。
戦争末期、敗戦の決断しかない戦況を大本営帝国陸軍本部は、壊滅していく前線から届く状況をひた隠し、ウソの情報を国民に流し騙(だま)し続けました。
それを信じた国民は、赤紙(召集令状)で次々に召集され‥勝ってくるぞと勇ましく、誓って國を出たからにゃ、手柄立てずに死なりょうかと行進し、天皇陛下、バンザイ、バンザイと叫び、老いた親や妻子に見送られながら御國のためにと戦地に向かいました。
どこの戦地へ行くかは、上官の引くクジで決まり、夫(兄)は運悪く、水・食料・武器もない悲惨なフィリピン戦線へ出征しますが、戦地へ向かう途中敵の攻撃を受け船もろ共にあえなく海に沈み戦死しました。
夫が戦死したため(白木の箱に遺骨はなく、英霊と書いた紙があるだけですが)老いた舅・姑のたっての願いで義弟と夫婦(めおと)となりますが、継夫となった義弟もすぐに召集され戦死しました。
届けられた継夫の白木の箱にも英霊と書いた紙が入っているだけでした。
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老いた舅は、怨念と憎悪を心中にしまい心臓発作で死亡、老いた姑は、自分たち家族を不幸のどん底に追い込んだ怨み・呪い・憎む相手も分からないまま嫁の足手まといになるまいと「運が悪い家ですまない」と書き残し首つり自殺をしました。
兄弟二人の夫に嫁ぎ、貧農で老いた夫の両親の暮らしを支え、理不尽な不幸の続く寡婦役の大竹しのぶが、実にすばらしいと思いました。
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この映画の脚本を書き、監督した99才の新藤兼人監督は、戦争への憎悪、怨念、拒否、戦争をする愚劣な国家権力への嫌悪と否定を自分の代わりに、映画に登場する主演者たちに、声を大にして叫ばしていました。
主演者たち共演者たち、いずれも名優ぞろいで映画を質の高いレアリズム溢れる反戦映画にしています。
by blues_rock | 2011-08-25 21:07 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)