心の時空

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a day in my life

イギリスの作家フレデリック・フォーサイス(1938~)と云えば、フランスのド・ゴール大統領暗殺計画の実話を題材に発表したデビュー作の「ジャッカルの日」(1973年映画化、1997年リメイク版「ジャッカル」)が、大ヒット、いきなりスパイ小説の人気作家になりました。
a0212807_13453780.jpgこの1974年スパイスリラー映画「オデッサ・ファイル」も戦後ドイツ(西ドイツ)の歴史の闇に迫るおもしろい映画です。
フレデリック・フォーサイスは、元ロイター特派員、元BBCのジャーナリストでしたのでフィクション(小説)とはいえ筋立て(プロット)にリアリティがあり、国際政治の裏舞台(諜報活動・スパイ工作)や権力の陰謀など現実と虚構(フィクション)の境界は、映画を見る者の心を捉えて離しません。
1980年サスペンス映画「戦争の犬たち」もフォーサイス自身が、アフリカの赤道ギニア共和国のクーデター計画に関わったことを題材に小説を書いているのでリアルです。
さて「オデッサ・ファイル」の監督は、アメリカ映画の巨匠ロナルド・ニーム監督(1911~2010、1972年のパニック映画「ポセイドン・アドベンチャー」は、ディザスター・フィルムの原点)でスパイスリラー映画の古典とも云うべきa0212807_13514648.jpg作品です。
1963年11月、ケネディ大統領が、暗殺されたその日に自殺した一人のユダヤ人老人(ナチスのユダヤ人強制収容所から奇跡的に生き残った一人)の日記から始まる物語は、ケネディ政権当時、アメリカ=西ドイツ=イスラエル3国間で締結されたイスラエルへの武器供与協定の舞台裏でうごめく西ドイツの秘密組織‘オデッサ’の陰謀を描いています。
西ドイツのフリージャーナリストのペーター(ジョン・ヴォイト 1938~ 女優アンジェリーナ・ジョリは娘)は、自殺したユダa0212807_1354525.pngヤ人老人の取材に行ったことから老人が、バルトにあったカイザーヴァルト強制収容所からの生還者で残された日記は、強制収容所であったおぞましいユダヤ人虐殺の記録であることを知りました。
ペーターは、日記から‘虐殺者’と恐れられたナチス親衛隊SS大尉のロシュマン収容所長は、連合国とイスラエa0212807_13574617.jpgルの必死のナチス戦犯追及を逃れ、西ドイツで密かに結成された元親衛隊SS幹部の秘密結社オデッサに 匿(かくま)われミュンヘンにいること、今まで戦死と聞かされていたドイツ国防軍大尉であった自分の父親は、傷痍兵を帰還させる任務遂行中、ロシュマンの横やりを無視したため、背後から射殺されたことを知りました。
虐殺者として恐れられたロシュマン元強制収容所長を名演しているマクシミリアン・シェル(1930~2014)の冷酷非道にして陰湿な姿は、卑劣なナチス親衛隊SSを象徴しています。
ペーターが、ロシュマンを追い秘密組織オデッサについて調べていくうち新ドイツの国民すらヒトラーとナチスのa0212807_1483495.jpg暴力と虐殺から目を背けていると思いました。
イスラエル諜報機関モサドが、ペーターを監視しているため彼は、ウィーンでナチス戦争犯罪を追及しているサイモン・ヴィーゼンタール(1908~2005)に会いに行き、自殺した老人の日記を見せました。
実在した人物サイモン・ヴィーゼンタールをモデルにした映画では、1978年映画「ブラジルから来た少年」の中でa0212807_149782.jpgヤコフ・リーベルマンとして登場します。
次第に明らかになる恐るべき陰謀‥オデッサは、密かにイスラエル攻撃用ロケットをドイツ国内で製造、元ナチス親衛隊SSに寛容なエジプトのナセル大統領と組み、アメリカの武器が、イスラヘルへ届く前にロケットでイスラエルを攻撃、消滅させる計画を実行に移していました。
ペーターは、モサドに協力し元親衛隊SS軍曹と偽りオデッサに侵入すると新たなIDとパスポートを偽造する印刷所に写真撮影のため連れて行かれました。
a0212807_14122720.jpg印刷工は、オデッサの暗殺から自分の身を護るため偽造した元親衛隊SS全員の名簿(オデッサ・ファイル)を密かに保管していました。
ペーター必死の努力で手に入れたオデッサ・ファイルと老ユダヤ人の書き遺した日記は、西ドイツ当局やイスラエル、サイモン・ヴィーゼンタール機関にわたり元親衛隊SSの秘密結社オデッサは、消滅、逃亡していたナチス戦犯たちも次々に逮捕されました。
イスラエルは、アメリカから(西ドイツ経由で)供与された武器によりエジプトを攻撃(第3次中東戦争)、エジプトが、応戦できたのは、6日間でした。
「オデッサ・ファイル」のペーターや「ハンナ・アーレント」のハンナ、「顔のないヒトラーたち」ヨハンのように‘真実を知りたい’と思い忌わしい過去と向き合う人たちがいる国は、健全で未来があります。
# by blues_rock | 2016-08-28 00:08 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)
フランスのオリヴィエ・アサヤス監督(1955~ 新作「アクトレス」)が、2008年に撮った映画「夏時間の庭」(原題 L'Heure d'été 監督・脚本)は、長女アドリエンヌ役のジュリエット・ビノシュ(1964~)とアメリカ人の婚約者ジェーム役のカイル・イーストウッド(1968~ クリント・イーストウッドの長男、俳優)が、共演しているので見ました。
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パリ郊外の小さな町ヴァルモンドワにある緑に囲まれた広い庭と瀟洒な旧い建物が、舞台の家族劇で、そこで独り暮らす老女エレーヌ(エディット・スコブ 1937~)には、3人の子供がいました。
長男のフレデリック(シャルル・ベルラン 1958~)は、経済学者で妻と子供2人がおり、パリで暮らしていました。
a0212807_21565089.jpg長女アドリエンヌ(ジュリエット・ビノシュ)は、ニューヨーク在住のデザイナーで世界中を飛び回っていました。
次男のジェレミー(ジェレミー・レニエ 1981~ 「少年と自転車」で少年の父親役)は、上海の工場で技術監督の仕事をしており家族とともに中国に移住する予定でした。
老母エレーヌは、75歳の誕生日に3人の子供と孫たちが、集まるのを機会に著名な画家であった叔父から受けa0212807_21574811.jpg継いだ広い庭と瀟洒な旧い建物、家の中いたるところにある美術品を売却して欲しいと3人に遺言しました。
3人の子供たちは、反対しますが、それぞれすでに独立して遠くで暮らす3人に小さな町のヴァルモンドワで生活する気はなく、老いたエレーヌの母親として悩みは、自分の死後3人に課せられる莫大な相続税の節税対策でした。
長男フレデリックの娘シルヴィー(アリス・ド・ランクザン 1991~)は、万引きとクスリの常習者で父親の悩みの種a0212807_21583023.jpgでしたが、彼女にとって夏の間、祖母エレーヌと暮らした庭と旧い建物(元アトリエ)は、最も居心地の良かった場所でした。
反抗期の少女シルヴィーが、亡くなった祖母と一緒に過ごした森の中でボーイフレンドに涙ぐんで祖母エレーヌとの思い出を語るところは、いま都会で暮らし子供時代に田舎の祖父母の家で夏休みを過ごした体験のある方が、胸を熱くするシーンだと思います。
a0212807_2159620.jpgエレーヌも亡くなり彼女の介助(身の回りの世話)を長く勤めていた家政婦が、去るとき長男のフレデリックは、亡き母エレーヌとの懐い出にどれでも良いから好きなものを受け取って欲しいと彼女に提案しました。
家政婦は、花好きのエレーヌのためにいつも花を活けていた普段使いの花瓶に手をやり「カラの花瓶は虚しい」からと手にとりました。
彼女は、迎えに来た甥に花瓶を無造作に渡すと別れを告げて立ち去りました。
a0212807_22302897.jpgその普段使いの花瓶は、エミール・ガレの作品であったところに、この映画のエスプリが、あります。
撮影監督は、エリック・ゴーティエ(1961~)で、チェ・ゲバラの青春時代を描いた2004年「モーターサイクル・ダイアリーズ」やショーン・ペン監督作品「イントゥ・ザ・ワイルド」が、印象に残ります。
まあ、何といってもこの映画の主人公は、ゴーティエ撮影監督のカメラが、捉えた緑に覆われた広い庭と旧い建物の佇まいと思います。
# by blues_rock | 2016-08-26 00:06 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)
猛暑と酷暑が、手をつないでやってきたような今年の夏もピークを過ぎて、朝夕いく分涼しくなりました。
先だって拙ブログにて「介護甲子園」(主催:日本介護協会)のご紹介をしておりましたが、いよいよ8月28日、a0212807_8133415.jpg日曜日(23時59分まで)の締め切りとなり、残すところあと 3日となりました。
現在、最終予選の第2ブロックにエントリーされた私の働く森の家「小規模多機能ホームみのり荘」は、中間発表で三番手に付けています。
ぜひ、皆様方のご支援と応援で師走、大阪で開催される決勝へ進出できますよう清き一票をお願いできましたら幸いです。
よろしくお願い申しあげます。

(右写真) 小規模多機能ホームみのり荘の‘青磁釉鶴首花入’の首が、ぽっきり折れましたので赤漆で直しました。
# by blues_rock | 2016-08-25 08:15 | 柏原生活/博多叙景 | Comments(2)
2014年アメリカ映画「クライム・ヒート」(原題「The Drop」)は、日本では、劇場未公開映画(ビデオスルー)ながらクライムサスペンス映画の秀作です。
a0212807_21155975.jpg監督、脚本、キャスト(配役)と申し分ないのに日本では、配給会社も上映館もないとは、トホホと云った(信じられない)心境です。
私が、映画館でいつも生理的につらいのは、本編始まる前に流れるつまらない宣伝と予告編を見せられることで、とくに邦画の予告編の酷さ(映画の酷さを予告しているようなもの)は、目を覆うばかりです。
さて、この映画「クライム・ヒート」(タイトルは「ザ・ドロップ」が良い)は、少しマニヤックなクライムサスペンス映画なので、胸にグサリとくる刺激的な映画を見たいと思う方にぜひお勧めしたい作品で、たとえば、ミステリアスにしてダークなクライムサスペンスの秀作「ブルーベルベット」のような映画(ただし「クライム・ヒート」にはキス・シーンすa0212807_21225436.jpgらなくエロティック度ゼロ)と想像していただければ良いと思います。
監督は、ベルギーの異才ミヒャエル・R・ロスカム監督(1972~、2011年の長編初監督作品「闇を生きる男」も秀逸)で、原作と脚本が、アメリカの名脚本家デニス・ルヘイン(1965~、2003年映画「ミスティック・リバー」や2004年映画「シャッター アイランド」ほか秀a0212807_21305582.jpg作映画の脚本多数)、キャストは、イギリスの若手名優トム・ハーディ(1977~)アメリカの名優ジェームズ・ガンドルフィーニ(1961~2013病没、享年51歳)、スウェーデンの女優オミ・ラパス(1979~ スウェーデン映画「ドラゴン・タトゥーの女ミレミアム」主演)、ベルギーの若手名優マティアス・スーナールツ(1977~、前述の「闇を生きる男」に主演、主a0212807_21315224.jpg人公の孤独と絶望感は見事、「リリーのすべて」では、リリーの恋人ハンス役)、アメリカの俳優ジョン・オーティス(1968~)と味のある名優たちばかりです。
映画の舞台は、ニューヨークのダウンタウン、ブルックリンの場末にあるバーで店を仕切るバーテンダーのボブ(トム・ハーディ)が、主人公です。
a0212807_21323320.jpg店の経営者は、表向きボブの叔父マーヴ(ジェームズ・ギャンドルフィー二)ながら、彼のバクチの借金の形(かた)にチェチェン・マフィアに店を乗っ取られマフィアが、
裏金を一時的に集める「ドロップ・バー(The Drop)」にしていました。
a0212807_21341552.jpg映画は、ボブが、深夜仕事を終えた帰り、自宅アパート前のゴミ捨て場で殴られ傷つき血だらけになった犬を拾うところから始まります。
偶然、隣人のナディア(ノオミ・ラパス)と知り合い犬の治療と世話の仕方を教わりました。
ある夜、ボブとマーヴが、閉店の準備をしていると二人組の強盗に襲われ売上金5千㌦を奪われました。
a0212807_21344147.jpg売上を集金に来たチェチェン・マフィアから即刻奪われた金と同額を工面するようボブとマーヴは、脅されました。
この強盗事件は、借金返済の金に困ったマーヴが、苦し紛れに仕組んだ偽装強盗でした。
ボブが、拾った犬の持ち主は、ナディアの元恋人でチンピラのエリック(マティアス・スーナールツ)で、これにニューヨーク市警のトーレス刑事(ジョン・オーティス)とチェチェa0212807_21383379.jpgン・マフィアが、ボブとマーヴに関わりながらダークなサスペンスドラマを展開していきます。
トム・ハーディ演じるバーテンダー ボブの寡黙で朴訥(ぼくとつ)とした雰囲気は、感情を表に出さない分、彼を取り巻く事態が、暗転したとき現われる彼の裏に潜む狂気との対比は、この映画の見どころで秀逸です。
惜しくも名優ジェームズ・ギャンドルフィー二の遺作になりましたが、トム・ハーディほか名優(名女優)たちの名演技を堪能する映画でもあります。
# by blues_rock | 2016-08-24 00:04 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)
a0212807_22362962.jpg昨夜(前編)に続き名女優 京マチ子が、主演した市川崑監督の1959年作品「鍵」を紹介します。
「鍵」は、同じ市川監督の作品「穴」で ‘コメディエンヌ’ として洒脱な演技を見せた京マチ子が、一転して真逆ともいえるエロティックなサスペンス&スリラー映画に挑戦し、見事な演技を披露した秀作映画(カンヌ国際映画祭グランプリ受賞、ゴールデングローブ外国語映画賞受賞)です。
谷崎潤一郎原作の「鍵」を和田夏十と長谷部慶治の名脚本家コンビが、エロティックでかつ一級のサスペンス&スリラーに仕上げました。
京マチ子のフェロモンたっぷりの妖艶な演技と劇中で性行為を連想させるシーンが、当時の映倫審査に引っ掛かり、何と京マチ子主演の映画で‘成人映画(R18)’指定という珍事になりました。
a0212807_22384348.jpg名カメラマンの宮川一夫撮影監督が、撮ったアップ、カットバック、フルショットは、出演者たちの迫真の演技と相俟って抜群の映像リズムを生み、映画に緊張感をもたらしています。
宮川撮影監督の撮った古都京都の瓦屋根や竹林の風情、部屋に置かれた骨董類、障子から射す薄明かりの陰影も必見です。
作曲家芥川也寸志(1925~1989)の音楽もサスペンス&スリラーの雰囲気を盛りあげています。
中村鴈治郎演じる老骨董鑑定士剣持は、京マチ子演じる若い妻郁子への性的欲望が、鎮まらず、老いによるa0212807_22425528.jpg体力の衰えを補うべく密かに医者に精力剤の注射をしてもらっていました。
妻郁子は、そんな夫を嫌いながら自由で贅沢三昧の生活を捨てる気など毛頭ありませんでした。
剱持には、叶順子(1936~)演じる前妻との間に生まれた一人娘の敏子が、いるものの年の近い継母郁子との仲は、良くありませんでした。
a0212807_22442918.jpg剱持は、敏子を仲代達矢(1932~)演じるインターン医の木村と結婚させようと画策しますが、木村は、女盛りで妖艶な剱持の妻郁子に惹かれていました。
郁子もまた木村に義理の娘敏子との結婚を薦めますが、郁子は、若い木村の誘惑に抗うことができませんでした。
剱持は、郁子と木村との関係に気づいていましたが、自分の嫉妬心を若い妻郁子へ向ける性的欲望の精神的a0212807_22453655.jpgなエネルギーにしていました。
ある夜、郁子を抱いていた剱持は、高血圧症の発作を起こし郁子のうえに崩れ落ちました。
郁子は、冷静に対処しながら木村に連絡、剱持は,脳溢血の後遺症が残ったものの一命は、とり止めました。
郁子は、木村に裏口の鍵を渡し彼を家に誘い入れ空き部屋で密会するようになりました。
a0212807_22472687.jpg不可解な家族の妖しく奇怪な人間関係を素知らぬ顔でじっと見ていたのが、北林谷榮演じる婆やのハナでした。
このハナの登場でサスペンス&スリラーが、全開になります。
ラストのオチ(エンディング)まで良く練りあげられた脚本と監督の演出、そして名女優・名優による一級のサスペンス&スリラーなのでこの続きは、ぜひ映画をご覧ください。
# by blues_rock | 2016-08-23 00:03 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)
a0212807_1841332.jpgつまらない日本映画ばかりが、氾濫する昨今に、私は、わが永遠のスター 名女優 京マチ子主演の傑作映画を今まで紹介してきましたが、二夜連続でご紹介する三作品「浮草」、「穴」、「鍵」は、いま見ても優れた映画です。
主演女優 京マチ子の艶やかさは、60年近くたった現在(いま)も色あせることがありません。
若いころから京マチ子が、出演した映画は、いろいろな国際映画祭で最高賞を受賞していたことから‘グランプリ女優’と称され高く評価されて来ました。
名匠小津安二郎監督、晩年の1959年作品「浮草」は、京マチ子35歳のときに主演した映画で、彼女の色っぽく気風(きっぷ)の好い演技は、見ていて惚れ惚れします。 
この映画「浮草」で名撮影監督の宮川一夫(1908~1999、溝口監督や黒澤監督作品の数々を撮影した名カメラマン)は、ドイツのアグファカラー(Agfa color)技術を採り入れ‘赤(朱色)’を強調、その斬新なテクニカラー映像は、日本映画史の一つのモニュメントです。
「浮草」は、小津監督が、1934年に撮影した映画「若草物語」(モノクロ、サイレント版現存)のリメイク版で旅芸人‘駒十郎一座’を描いた群像人情劇です。
座長の駒十郎を二代目中村鴈治郎(1902~1983)、その女房に京マチ子、一座の若手女役者を若尾文子(1933~、当時26歳)、駒十郎の元馴染みの女(元愛人)に杉村春子(1906~1997、この映画劇中のセリフ「あゝそう」に小津監督は70回のNGを出したと述懐)、一座のひいき筋の旦那に笠智衆(1904~1993)など小津監督の厳しい演出a0212807_18132742.jpgに応える芸達者たちの演技は、脇の出演者も含めて‘役者だなあ’と(今の日本に‘役者’が少ないので特に)感動いたします。
   * * *
京マチ子は、市川崑監督(1915~2008 1956年作品「ビルマの竪琴」、1958年作品「炎上」)の映画に(確か)4作出演しています。
a0212807_18163614.jpgそのうちの一つが、1957年の作品「穴」です。
京マチ子は、ブラックなコメディ映画の主人公が、変装しながら逃亡するという役どころで、その役柄を軽妙かつコミカルに演じ ‘コメディエンヌ(喜劇女優)’ としての才能も発揮しています。
京マチ子が、演じる出版社の記者 北長子は、根拠のない警察の汚職告発ルポルタージュ記事を書き、クビになりました。
a0212807_1826387.png途方に暮れていると北林谷榮(1911~2010)演じる調子のいい旧友赤羽スガに「新しいルポ企画がある」と声かけられホイホイと乗ってしまいました。
弱小出版社にスガが、売り込んだ「人は完璧に‘蒸発できるか?’ 30日間逃亡できたら賞金50万円」といういい加減なルポ企画でした。
出版社をクビになった長子には、「30日間の逃亡資金」がなく、スガは、彼女に銀行の支店長に知り合いがいるから借金できるよう斡旋するので至急会うように指示されました。
指定された銀行に行くと支店長と副支店長の長子に応対する態度が、どこかa0212807_1827943.jpg変でした。
支店長と副支店長は、表面上お堅い銀行マンのふりをしながら裏で気の弱い出納係を使い多額の預金を横領していました。
ルポ企画実行の逃亡資金が、どうしても欲しく、銀行から借金したい長子は、ここでも二人の良からぬ提案にホイホイ乗り出納係殺人事件の逃亡犯にされてしまいました。
京マチ子演じる長子の感情のこもらない早口のセリフが、相手かまわずポンポン飛び出し、映画を見る者は、一見ドタバタした不条理劇のように感じるものの、このアップテンポな展開が、妙に垢ぬけてシャレて見えるのは、久里子亭(市川監督と夫人の和田夏十 1920~1983 との共同ペンネーム)脚本の秀逸さでしょう。(後編に続く)
# by blues_rock | 2016-08-22 00:02 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)
GAFA(ガーファ)という言葉(文字)を初めてお目(お耳)にされる方も多いのではないでしょうか?
a0212807_11472859.jpgクーグルのG ・ アップルのA ・ フェイスブックのF ・ アマゾンのA の頭文字を並べたもので、いずれもアメリカの企業時価総額上位 7社に入る 4社です。
この4社は、アメリカ経済の強さの象徴にして世界経済を牽引している会社でもあります。
「ふ~ん、それがどうしたの?」と問われそうが、実は、現在の世界情勢、とくにイギリスのEU離脱要因となった移民問題、フランス・ドイツ・ベルキー・a0212807_11481417.pngオランダなど主要EU諸国に吹き荒れる反移民(反難民)の排泄運動、さらに排他的民族意識、なかんずく当該国のアメリカでも大統領選挙を前に狭量な反移民のプロバガンダ(邪悪な独裁者の常とう手段)による選挙運動と併せて偏狭な白人至上主義と人種差別を煽るおバカな候補もいますので笑いごとでは、済まされなくなりました。a0212807_1149055.jpg
240年前の1776年、アメリカ合衆国(当時13州)は、イギリス(大英帝国)との独立戦争に勝利し独立しました。
建国以来の国是は、‘自由(リベラル)’と‘民主主義(デモクラシー)’で、新大陸のアメリカには、世界中から理想の新世界に憧れ、多くの民族が、‘アメリカンドリーム’を夢見て移民しました。 (上図 : 20数か国出身のヒスパニック系アメリカ市民 5千万人が暮らす地域)
a0212807_11511332.jpg現在、アメリカ合衆国の人口は、3億2千万人、世界最大の多民族国家で多種多様な文化が、融合した「人種のるつぼ」の人工国家です。
移民の子孫が、創りあげたアメリカ合衆国と国家の規範である憲法、そして国の象徴である国旗・国歌に忠誠を誓ったアメリカ国民にとってこの3つは、絶対的なものです。  (左写真 : 女優キャメロン・ディアスも、父方キューバ系、母方先住民 チェロニー族系との混血 ヒスパニック系アメリカ人です。)   前置きが、長くなりました。
GAFA(ガーファ)4社の創業者、クーグルの創立者ラリー・ペイジとセルゲイ・ブリンは、ユダヤ系のロシア移民の子供で、アップルの創業者故スティーブン・ジョブズの父親は、シリア出身の移民、フェイスブックのオーナー マーク・ザッカーバーグは、ユダヤ教徒にして夫人のプシクラが、ヴェトナム系中国人難民の子供で2人の間に2人の娘がいます。
アマゾンの創業者ジェフリー・ベゾスの母親は、キューバ系で先進的なサイバー空間でプラットホーム事業を展開するGAFA(ガーファ)のオーナー全員に移民の血が、流れています。
少子高齢化が、深刻な社会問題となっているわが国も労働力と国勢維持のために‘移民の受入れ’は、時間の問題でしょう。a0212807_12324952.jpg
日本の歴史を鑑みれば、原始日本人のルーツ(人種・文化・文明)は、ユーラシア大陸からの渡来人(稲作移民=弥生人)なので、その子孫である私たち日本人の遺伝子には、移民受入れのノウハウが、すでに書き込まれているかもしれません。
しかし、問題は、うっとおしい宗教や汚染された洗脳思想(テロ行為)が、一緒に入ってくる リスクにどう対処するか‥変な宗教なら神と仏の同化を自家薬籠中のものとするわが大和民族の精神特性により、八百万(やおよろず)の神々の一つにするでしょうが、狂信を強制する宗教や洗脳された愚劣な思想は、悪病ウィルスの防御対策と同じで水際で防止するしかないでしょう。
# by blues_rock | 2016-08-20 00:02 | 社会/歴史/思想 | Comments(0)
映画の冒頭「一匹の小さな蝶の羽ばたきが、地球の裏側で台風を起こす」とクレジットされて始まる「カオス理論のバタフライ効果(バタフライ・エフェクト)」を描いたタイトル名もずばり「バタフライ・エフェクト」を紹介します。
a0212807_22502140.jpg先日、タイムパラドックス(時空の逆説)を描いたSF映画「プレデスティネーション(Predestination=予め定められた運命つまり宿命)」を見て、この映画は、2005年公開映画「バタフライ・エフェクト」のカオス理論(バタフライ効果)をモデルにタイムパラドックス(時空の逆説)を描いたのではないかと思いました。
カオスとは、本来‘混沌’とか‘無秩序’という意味ですが、この映画「バタフライ・エフェクト」のプロットは、主人公の大学生が、少年の頃から時おり起こす発作=一時的に記憶喪失するブラックアウト現象(記憶喪失症状)を時空のカオスに見立てています。
主人公は、記憶のブラックアウト(空白)を補うため7歳のときから日記を書き続けていました。
この日記が、主人公の時標変換装置(タイム・マシン)になり自分と自分に関わる人たちの人生に不幸をもたらした過去のミスを改めるために何度もタイムスリップするうちに生じた変化が、人生の‘時間の歪み’を生じさせました。
a0212807_2252103.jpgこの「バタフライ・エフェクト」の脚本と監督であるエリック・ブレスとJ・マッキー・グラバーは、共にプロファィルの詳細が、不詳ながら、斬新なアイディアと丹念に練られた脚本は、抜群です。
私は、「プレデスティネーション」を見てタイムパラドックス(時空の逆説)をプロットにした良い映画を探していたら、この「バタフライ・エフェクト」に行き着きました。
映画を見始め、冒頭の庭で犬と遊ぶ主人公の少年と車のエンジンを直す彼の母親とのやり取りを見て、すでにa0212807_22561391.jpg見ていることを憶い出しました。
主人公の大学生エヴァン(アシュトン・カッチャー 1978~)は、少年時代から記憶が、時おりブラックアウトする症状(発作)に悩んで来ました。
大人になり、発作もなくなったある日、エヴァンは、当時書いていた(7歳から13年書き続けた)日記を読み返していると突然、記憶から欠落(記憶喪a0212807_2302540.jpg失)している部分を思い出しました。
さらにブラックアウトしていた記憶(自分と過去の不幸な出来事)が、日記のページをめくり不幸の始まる当日まで戻れば、ミスの原因を変更することができることにも気づきました。
エヴァンの幼馴染ケイリー(エイミー・スマート 1976~)が、彼のブラックアウトしていた記憶の‘狂言回し(キーパーソン)’の役割を
a0212807_2375020.jpg担っています。
しかし、エヴァンの少年時代、ケイリーという幼馴染みの女の子は、いなかったことを彼の幼な友だち(旧友)が、彼に教えました。
映画は、エヴァンが、街でケイリーにそっくりの女性とすれ違い、お互い振り返ったところで終わります。
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SFミステリー映画「バタフライ・エフェクト」を見終わった後で、自分のカオス(混沌)が、収まるかどうかは、あなた自身のバタフライの羽ばたき次第です。
# by blues_rock | 2016-08-18 00:18 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)
名優にして異才映画監督ジョン・ファヴロー(1966~ 前作の「シェフ」では製作・脚本・監督・出演)の最新作は、フルCG(ヴァーチャル映像)によるディズニー映画「ジャングル・ブック」(製作・監督)です。
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8月11日から多くの映画館で一斉に公開を始めましたが、どこも子供向けの‘吹替え版’(+3 D・4D・ミラマックス)ばかりなので見る気にならず、がっかりしていたら幸い天神のソラリアで‘字幕版’を上映していましたので、早速a0212807_17265486.jpgレイトショウに駈けこみました。
「ジャングル・ブック」の原作は、イギリスの作家で詩人ラドヤード・キップリング(1865~1936、インド・ムンバイ生まれ、ノーベル文学賞受賞)が、1894年に発表した児童文学の短編小説集です。
ほとんどの方が、子供のころ一度は、児童小説として読んだことがあると思います。
a0212807_17274445.jpg本は、読んでいないという方も幼いころ、アニメーションや映画で見た、狼に育てられた少年が、熊や豹に助けられジャングルで様々な冒険をする物語に胸躍らせたことを憶えておられるのではないでしょうか。
この映画の製作者であるファヴロー監督は、アカデミー賞撮影賞・視覚効果賞を受賞した「アバター」(2009)、「ライフ・オブ・パイ トラと漂流した227日」(2012)、「ゼロ・グラビティ」(2013)などハリウッド屈指のCG(ヴァーチャa0212807_17315885.jpgル)映像チームならびに製作スタッフを集め、彼らの最先端映像技術が、「ジャングル・ブック」でフルに発揮できるよう環境を整え製作に入りました。
映画は、主人公の少年モーグリ以外、スクリーンに登場する動物たちやジャングルすべてを実写と見紛(みまご)うリアルなCG映像で表現されています。
a0212807_1733014.jpg私の「ジャングル・ブック」への強い関心は、ジョン・ファヴロー監督の最新作であること、と映画の‘最先端CG(ヴァーチャル映像)技術’が、どこまでリアリティ(本物=質感・実在感)を表現できるようになったか自分の目で確かめたかったことの二つです。
さすがファヴロー監督です、最先端CG映像に申し分なく演出といい構成といい素晴らしい冒険活劇の「ジャングa0212807_17335121.jpgル・ブック」でした。
映画好きの大人からアニメーション動画の大好きな子供まで三世代家族そろって楽しめる映画です。
この「ジャングル・ブック」には、ジブリの宮崎駿監督作品と共通するところもあり熊のバルーが、人生について語る含蓄あるセリフは、大人でないと分からないかもしれません。
a0212807_17373960.jpgジャングルで黒豹に拾われた赤ん坊のモーグリは、狼一族に預けられジャングルを元気に走り回る少年に成長しますが、ある日人間への復讐心に燃える虎に見つかりモーグリを引き渡すよう狼に迫りました。
モーグリは、狼の群れから離れジャングルでいろいろな動物と出遭い、困難に遭遇するたびに人間の智恵に目覚め、ジャングルで共生することを学び、モーグリを執拗に追う虎と対決するという物語です。
a0212807_17384410.jpgファヴロー監督は、数千人のオーディションから12歳の新人ニール・セディ(2003~ 初々しい秀逸な演技に感心)を快活なジャングル少年モーグリに抜擢、演技経験のないニール少年を付きっきりで演技指導しながら‘実写’しました。 (こちら参考)
字幕版の声優陣も豪華で、それぞれ動物たちの個性にぴったりのキャストです。
モーグルを厳しく同時にやさしく見守る黒豹のバギーラを名優ベン・キングズレー(1943~)、モーグルに惜しみa0212807_17422618.jpgない愛をそそぐ母オオカミ ラクシャにメキシコの女優ルピタ・ニョンゴ(1983~)、恐ろしい虎のシア・カーンをイギリスの俳優イドリス・エルバ(1972~)、モーグルに人生を教える熊のバルーに名優ビル・マーレイ(1950~)、ジャングル奥地に迷いこんだモーグルをねらい言葉巧みに近付く にしき蛇のカーを若手名女優のスカーレット・ヨハンソン(1984~)さらにオランウータンのキング・ルイを名優クリストファー・ウォーケン(1943~)と声(セリフ)の名演a0212807_1744050.jpgぶりも楽しめます。
音楽監督ジョン・デブニー(1956~)によるディキシーランド・ジャズやニューオリンズ音楽を使ったサウンド・トラックは、紛れもなく音楽好きな大人向けと推察、ドクター・ジョンと劇中で熊のビル・マーレイが、それぞれ歌う「The bare necessities」、にしき蛇のスカーレット・ヨハンソンは、ハスキーな声で妖艶に「Trust in me」を歌い、オランウータンのクリストファー・ウォーケンが、渋く陽気にのりのりで歌う「I Wan'na be like you」も秀逸です。
# by blues_rock | 2016-08-16 00:06 | 映画(シネマの世界) | Comments(2)
私が、委細かまわず勝手に私淑している金継ぎ工芸会講師にお願いして金継ぎしていただいた‘藍柿右衛門’の宝暦様式(1750〜1780)古伊万里 染付 総蛸唐草 長皿(裏に‘富貴長春’銘)の逸品です。
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ご本人は、仕上がりに満足しておられない(金よりプラチナを蒔きたかった)ようですが、ともあれ金継ぎの均一で滑らかな細い線は、さすが私の先生、蒔絵名人の仕事です。
a0212807_1143590.jpgこの古伊万里 総蛸唐草 長皿には、横に一筋ヒビが入り、私に修理(金継ぎ)依頼が、あったものを手に負えないと判断、とくに先生にお願いして金継ぎしてもらいました。
延宝年間(1670〜1690)に始まったとされる‘藍柿右衛門’は、元禄・享保・宝暦と少しずつ様式を変えながら見事な古伊万里染付磁器を生み出していきました。
a0212807_118321.jpg右の長皿は、古伊万里のコンニャク印判染付 花唐草長皿(裏に‘福’銘)で享保期のものと推察しますが、総蛸唐草 長皿(富貴長春)に比べるとやはり見劣りします。
いくつもヒビがあり、一度は、錫継ぎしたものの技術の未熟さ(粗雑さ)ばかり目立ちやり直すことにしました。
じつは、この失敗体験が、その直後私に依頼された逸品(総蛸唐草 長皿)の金継ぎを委縮させてしまいました。
a0212807_11111572.jpgそれまで私の金継ぎは、‘自分の自分による自分のため’の金継ぎで、どれも結果オーライ、何でもあり、でした。
お金をいただいて金継ぎするリスク(責任)は、結果オーライ、何でもあり、というわけにいかず、金継ぎ修理品にも完品(無キズなもの)と同等の価値が、求められます。
漆芸である金継ぎは、そこに“価値の創造”が、あってこそのものと私は、思います。
a0212807_11121663.jpg右の染付皿は、釉薬が、ほんのり薄い緑色をしている藍柿右衛門 薄手染付 鷺文皿(裏に‘二重角渦福’銘、 19㌢)で私は、金継ぎと併せ古伊万里の真贋を学ぶために購入しました。
欠傷が、2か所(9時と5時方向)あり刻苧を入れ金継ぎしたいと思います。
私は、贋作ではないかと疑っていますが、本当のところ正直私には、分かりません。
私の中で「?」が、点滅するのは、‘生掛けの藍柿右衛門’で釉の掛けもらし部分に変色がなく、そもそも当時貴重品であった磁器に掛けもらしなど工程ミスは、考えにくいこと、鷺文の絵付けが、薄手であること、使用による擦り傷の少ないこa0212807_11162796.jpgと、絵付けの線に勢いなく稚拙で加筆の跡らしきところも散見されること‥など、近年の贋作は、相当目利きの方でも「分らない」らしく、真作そっくりの贋作もあり、ほとんど区別のつかないものもあるそうです。
白洲正子さんの言葉をお借りすれば、「まず一つ買ってみること。人に頼っているうちは、自分のものにならない。」、「自分が、好きだと思うもの、人に云われたものじゃなく自分の好いと思うものを手に入れなさい。」と白洲さんらしくストレートです。
目利きの骨董商の秦秀雄は、「贋作を弄れないものに真作は分からない」とか「これはというものを見て、それにのぼせ上がることですよ」とこれまたa0212807_1119593.jpg実にシンプルな箴言です。
希代の名目利きであった青山二郎や作家小林秀雄は、「真作にもピンからキリまである。ピン以外みんなダメだ。」と辛辣です。
古美術品や骨董品には、時代の人びとに愛された手跡、歴史の風格、時空を経た風情が、きっとどこかに存在するのでしょう。
それを感じるか感じないか‥自分次第能書きばかりの金継ぎ小僧の修業は、これからも続きます。
# by blues_rock | 2016-08-15 00:15 | 金継ぎ/古美術/漆芸 | Comments(2)
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